お風呂掃除は面倒で苦手、と思っていました。一昨年くらいまでずっと。
汚れてきたかぁ、しかたないなぁもう、という頃合いでしぶしぶ重い腰を上げ、お風呂用洗剤とスポンジを使ってゴシゴシ・・・ふぅ。
そもそもお風呂場って、どうして汚れるんでしょう。汚れる理由なんて、あります?
いつも出る時、シャワーで床も壁も鏡もきれいに洗い流しているのに。
いつの間にか忍び寄る、汚れのサスペンス。
風呂場という密室のミステリー。
その謎を、解き明かしたい。
第2回:お風呂掃除の真実
ヒントは、思いがけない所から。ふたつの、重要な証言を得たのです。
【証言、その1】
ある日テレビで、情報バラエティ番組を観ていた時のこと。お風呂場の鏡についたウロコ汚れをきれいに落とす方法として、“デニムの端切れに歯みがき粉をつけて磨く”やり方がVTRで紹介されました。
「ふぅん、こんど試してみようかな」なんて頭のメモに留めていたら、そのVTR明けにスタジオのMC 今田耕司さんが、ボソッとこんなことをボヤかれたのです。
「なんで?風呂場の鏡なんて、
毎回出る時ぱぱっとタオルで拭きゃ、
そもそも汚れへんやん。」
ちょ待っ、え。それって・・・どういうことー!?
【証言、その2】
ほぼ日刊イトイ新聞で、福山雅治さんと糸井重里さんが対談された「望まれた役をする”劇団福山雅治”」を読んでいた時のこと。最終回(第7回)での、福山さんの発言です。
「でも、僕は必ず風呂から上がる時、
シャワーから出る時というのは、
必ずT字ワイパーでシャワールームの
壁と床の水切りをしてからじゃないと
お風呂を出られない男なんです。」
どういうことー!?いったいそれは、どういうことなんだ・・・。
一流のきれい好きと拝察するおふたりによる、貴重な証言。それも偶然、近い時期で、印象に残ったのでした。
今田さんはお風呂場の、鏡を「拭く」。福山さんは、壁と床を「水切りする」。
「洗う(洗い流す)」のでは、なくて?
――さあ、ここから推理です。
お風呂汚れの謎を解く鍵はひょっとして、このふたつの証言にあるのではなかろうか・・・。証言の真意に、思いを巡らせます。
「拭く」ことと「水切りする」こと、このふたつの行為に共通する目的とは・・・。点と点が、線で繋がったその瞬間、わたしはついに、お風呂掃除の、真実をつきとめたのです。
お風呂汚れの原因は、シャンプーや石鹸が残ったのでも、身体から出た垢でもなんでもなく、「水」そのものだ!
きれいな水で洗い流して自然乾燥する、という当たり前に、疑問を持ったことなんてなかった。けれど、きれいだと思っていた水が鏡や床の表面に「水滴」として残っていると、その蒸発した跡こそが「水垢」になるのだ。
だからおふたりは、拭いたり水切りしたりして「水滴を残さない」ことで「水垢を作らない」。
汚れを未然に防ぐ。ゆえに掃除は不要。
謎が、解けたぞーーー!!(鳴り響く歓喜のファンファーレ)
そうとなったらいざ、マイクロファイバータオルとT字ワイパーをお風呂場に装備。
毎回出る時に、タオルでささっと、鏡と水栓についた水滴を拭き取ります。ワイパーでしゃしゃっと、壁と床の水を切ります。所要時間、ものの30秒くらいでしょうか。
・・・なんと。これだけで、驚くほど汚れなくなりました。当然乾きが早く、カビも生えない。以前のように洗剤を使った掃除はもはや、ほとんど必要なくなりました。お風呂汚れの悩みからの解放感、入る時に毎回きれいな気持ちよさ・・・・・・感動です。
いや、もしかしたら、「たまに掃除するよりも、毎回出る時に拭くほうが面倒」とお感じになる方もいらっしゃるかも知れません。幸い(?)わたしの場合、ふだん毎回出る時にバスタオルで身体を拭くのを面倒と感じたことはないと思い当たり、身体を拭いた無意識のまま、流れで鏡も拭く、というイメージをしたら楽に習慣づきました。
そうして体得、納得した結論再び。
長年に渡って難儀だったお風呂掃除問題を解決した真実とは、どんな掃除方法でもなく、「掃除しなくていいようにする」だったのでした。
以上、「アップデートする暮らし」第2回。お読みいただきありがとうございました。あくまでわたしにとっての真実であって、誰しもにベストな解というわけではないかと思いますし、わたしも今後やり方を変えるかも知れませんが、この「掃除しなくていいようにする」発想は以降、家の中の他の場所をきれいに保つことにも役立ち、助かっています。
諸先輩方からしてみれば「おいおい、今ごろ知ったんかい?」という当たり前のことなのかも知れませんが、なにぶんマイペースな気づき方とアップデートです。
まさかの今田耕司さんと福山雅治さんに、掃除面での感謝を忘れない。